サッポロ シティ フォーカス

the sight where I met the unconscious of a city, which was crossing the city consciousness.

「雪」を読みながら

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 連日豪雪。雪のない時期に比べて倍の時間、家から会社まで車中にいる。中谷宇吉郎の「雪」を朗読して間を持たせた。

 水蒸気の昇華によって空中で結晶する雪を拡大してみると美しい雪華の様相になるが、中谷氏はその美しさを表現するよりも、読者が雪の成り立ちに興味をもってもらうことに焦点をあてている。最後に書かれている「雪の結晶は、天から送られた手紙である」という有名な美文も、研究すれば沢山の情報がその中に入っているという意味だ。初めの章では、雪を愛でる暖地文化を批判し、現実に雪国で暮らす人々の様々な困難に相当数のページを当てている。雪害による金銭的なマイナス面も数字をあげて記述している。じりじりしか進まない車道にあって、材木を山から下ろす橇の摩擦係数を測定しようとしたりするくだりを楽しんだ。

 

 リアリティのあるロマンが感じられる文章に、昭和初期の実学の豊かさを想った。その後、会社で説明する調査報告書を読み、論旨を確認した。

 中谷氏は、名もない人夫の合理的な橇つくりや江戸時代の一藩主の雪花観察記録を科学的として賞賛している。大学教授でもない夫と私が整理しているデータも、社会科学的にも意味があるところを目指したいと鼓舞された。一方、私は、雪を愛でる暖地文化が真実追求を妨げているとは想わないので、遠慮なく雪がつくる美しい曲線と白い統一感を車中から撮った。

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事務所での打ち合わせが終了するころには雪は止んでいた。雪のさっぽろを歩いた。