図式
花房は 初夏のあかしや 香りおり
6月から7月にかけて、札幌街中ではどこからともなく芳しい空気が漂ってきます。ニセアカシアは背が高く、低い部分の枝が切り取られているので、ほとんどが見上げる位置で花開いています。昔は今より多く植えられていたようです。
かつて痩せた土地の緑化資材として、さらに街路樹として植えられ、火持ちの良い薪炭材としても利用されていたニセアカシアですが、アカマツやクロマツなどのマツ林、ヤナギ林が減少し、希少種の生育を妨害し、植生を独自の構成に変えてしまうことから、「要注意外来生物リスト」に入れられ、初夏を告げる美しい香りについて語られる事も少なくなりました。しかし、ニセアカシアの花を「みつ源」とする養蜂業者にとっては大切な植物でもあります。
さて、上の写真は、札幌都心で伐採されていないニセアカシアです。北原白秋が「このみちーはーいつかきたみーち、あーあー そうだよーーあかしやーのーーはながさいてーる」と歌った札幌時計台前です。時計を隠すと、山裾の洋館のようです。
この札幌時計台は、北1条西2丁目にあります。この条丁目の中には、札幌市役所と、北海道経済センタービル、札幌時計台ビル、札幌すみれホテル等があって、2009年の経済センサスによると事業者数は218、従業者数5175人です。中央区内条丁目で11番目に多い事業者数で従業者数は北5条西2丁目に次ぐ2番目の多さ、まさに都心の只中です。一方、住んでいる世帯人口ともに2。
札幌の象徴として使われている札幌時計台ですが、具体的にみてゆくと沢山の事柄が凝縮されています。だからこそ札幌のシンボルなのでしょう。札幌市役所に資料を頂きにゆく帰り道、札幌時計台をめぐる物語性を薄くし、一般には図式にすぎないと捨て置かれがちな統計数値と植生から、しるしました。
GRAND STREET GARDEN STAGE
祭りが終わってからライラックが咲き始めた大通公園では、人々が気持ち少し御洒落してそこここでくつろいでいました。
それぞれの今をまとって、見ることも見られることも織り込み済みで、都市にある振る舞いの絵を作っています。
西3丁目では、南側の明治生命ビルに覆いが掛けられていました。新しい幕がまた上がる準備のようにも見えました。
姉妹都市ポートランドから贈られた「水飲み」は、同市で水を飲めず喉を乾かしていた少女のために作られたようです。公共心の有様をプレゼントされたのでしょう。その想いはそこここで継承されているようにも思えます。
西8丁目と9丁目は南北の車道がなくイサムノグチのビッグスライドマントラがどっしりと子供達の遊び場を守っているように感じられました。
後ろにあるくじらの森の白い滑り台周辺には遊具もあり、親子連れが空間の変化を楽しんでいました。
背の高い木々の後ろに高層の建物があるためでしょうか、他者がいることをきちんと意識した節度が行動にみてとれました。