内面への道。
クラーク会館までたどりつくと、木々の向こうに夕日が沈むところだった。
今日は、本屋さんにヘルマン・ヘッセ関連のものを探しに札幌駅前まできた。
彼の思想と、美しい朝焼けとのつながりを表現しようとしている旧知の人がいる。
今日、83歳になった。
その結びつきは、トンネルの向こうのようで、こちらにはよく伝わってこない。
だが、都会の華やかな照明のなかでは、霞んでみえなくなりそうだった。
少しわき道から、時代を遡ろうと思った。
思いがけず、どこかであったような老夫婦とであった。
写真撮影のお願いは、遠慮がちなうつむきによって、否まれた。
かわりに、「清華亭へ行かれるんですか?」と聞かれる。
「え、中をみられるのですか?」「ええ、あいてるかな・・・。」
しばらく同じ道を歩く。「ここに昔から住んでるの。」「え、明治時代からですか?」「ずっと住んでるの。」
感謝の言葉をあとに、札幌最初の公園「偕楽園」内の清華亭へ向かう。
今のものをしっかり見ながら、心を後ろ向きにしてみた。
観光している現実を踏まえつつ、少し、時代を遡れそうだ。
いつか来た道を、幾分、引きながら辿った。